逗子に建てるならこんな家

潮風を孕む家

 浜辺にほど近い逗子を選んだということは海やアウトドアに親しむ人なのかもしれない.それならば屋外と親和する家が相応しいだろう.でも,そもそも家は屋外から安らかな屋内を切り取るために建てられるため,いつもと少し考え方を変えないと屋外と親和する家になりそうもない.たとえば〈屋内のように設えた屋外〉や〈屋外のように感じられる屋内〉とか.
 カギは床だと思う.屋外から屋内を切り取るとき,外の環境を遮るために屋根や壁を設けるけれど,床はそれに加えて,起伏のある外の地面の様にではなく,重力を受け止め生活の場として人が平衡を取り易いように水平で広く平らに整えることが求められる.<左: 1F~1.5F平面図 / 下:2F~2.5F平面図>

 だから,〈屋内のように設えた屋外〉として,生活のために整えられた屋内の床を屋外に持ち出したような,或いはポップな野点感覚でウッドデッキが重宝されるのだろう.ただし,雨,風,日差し,埃や虫の煩わしさで,それだけでは時が経つにつれて使われなくなり屋外の居場所を示す記号になってしまう気がする.だから,〈屋外のように感じられる屋内〉を軸に屋外と親和する家を考える.
 そこで,逆に起伏のある屋内をつくれば〈屋外のように感じられる屋内〉に近づくのではないかと考えた.具体的には,大きな開口を介して庭と繋がる広間を下層に設け,そこから等高線を重ねるようにして空を背景にした上層まで繋げている.その上で,気分をさらに外へ解放するため,〈屋内のように設えた屋外〉として,地面との間を取り持つテラスを広間と一体で使えるように設えている.

<上左:2.5F(GL+4,545) / 上中:1.5F~2F(GL+3,180) / 上右:1.5F(GL+1,815)>

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